(第50章)死体と焼け石と水

(第50章)死体と焼け石と水

杏奈は
「何で蛇を恐れただけで分かるのかしら?
だって他にも大勢怖がる人達はいくらでもいるでしょう?」
と鋭い指摘をした。
しかし教祖は杏奈の発言をほとんど聞かず
「つまり!昔、蛇に騙されて知恵の実を最初に食べたのはイブ、
次に食べたのがアダム、そして2人は楽園を追放された!
そのトラウマが無意識の内に彼女の心の奥底に残っているのだ!
蛇はサタンの化身なのだから……」
と言った。
男性FBI捜査官は
「それじゃ?今夜そのサタンと悪魔の子のアダムと美雪さんのイブがそろった時、世界は変わると?」
教組は
「そうだ……」
と最後にそう言うとしばらく何かをブツブツつぶやいていた。
その中に
「それを邪魔する為にゴジラとミニラがいる……」
とも聞こえた。男性FBI捜査官はその言葉を聞いて
「それじゃ?」
と質問しようとしたが、それ以上は何も語らず、
やがて犯行の供述をした訳でも無くその教祖と信者達は女性FBI捜査官に
厳重注意を受けて真鶴の避難所に帰された。

真鶴の避難所では別の父親が
「どうして?怪獣ごときをかばおうとするんですか?」
と怒鳴った。それに対し保護派の人々が
「まだ分からないんですか?」
今度は浩子や抹殺派の人々は
「分かっていますよ!」
と激怒した。沙羅は
「何を?!」
と大声で聞いた。
浩子は
「どうせ!私達の街を壊して島か海に帰るんでしょ!」

沙羅は
「違うわよ!未来を守りたいからモスラは戦っているんでしょ?」
と必死に反論した。

その頃、東京の廃墟の上空を飛行する轟天号内でアヤノは
「東京の温度が上昇中!かなり高濃度火山ガスも検出されています!」
ジェレルは
「……暑くて気分が悪い……機内の温度も少しずつ上昇している模様です!」
と言った。
ゴードン大佐は
「よし!これ以上あいつらに東京を荒らされてはたまらん!!
さっさと決着を付けるぞ!」
すると小美人のテレパシーの声が聞こえた。
「待って下さい!デスギドラは『死』そのものなので通常の兵器は無力です!」
「デスギドラは倒せませんが……3体の力で封印する事は出来ます!」
全員は唖然として小美人たちの声を聞いていた。
ゴードン大佐は考え込み
「つまり……死体に攻撃しても焼け石に水か?……どうすれば?」

ケーニッヒギドラはデスギドラの言葉に惑わされそうになったが、
ゴジラとミニラと同じく冷静さを取り戻した。
3体は大ジャンプをし、デスギドラに飛び掛かったが、一瞬で長い尾と両翼で軽く跳ね飛ばされた。
デスギドラは
「あの家畜の女の意識はお前にとってなんだ!
我々が文明を破壊するは何故だと思うのだ??」
ケーニッヒはデスギドラに飛びかかり
「知らん!」
と答えた。デスギドラはケーニッヒを軽く吹き飛ばすと
「根こそぎ文明を破壊するのは!より弱い生物に生き残るチャンスを与える為だ!
生態系の頂点に立ち支配するのがギドラ族だ」
ケーニッヒは
「くだらん……だから進歩せずに没落したんだろう……」
と嫌味の言葉を浴びせかけた。
美雪は必死に自分の意識を保とうとした。
しかし恐怖と絶望で身体が縮こまり、
体育座りのまま狭い瓦礫の隙間でガタガタ身体を震わせた。
美雪の感情は激しく高ぶり、今にも発狂しそうな勢いだった。
さらにサウナに入ったかの様に全身が熱く冷汗をかいていた。

(第51章に続く)