(第43章)狂気の女性の恐怖!

(第43章)狂気の女性の恐怖!

 ようやく粉雪が晴れ、視界が広がった時、
サンドラはゴジラの上にのしかかっていた。
ゴジラはサンドラを投げ飛ばそうともがいたが無駄だった。
 網走市に入った轟天号内でニックは
「現在!サンドラの体温さらに低下中!」
尾崎は
「マズイな……」
とつぶやいた。
ゴードン大佐は
「よし!サンドラにプロトンミサイルの攻撃準備を!」
全員は
「了解!」
と言うとミサイルのハッチを開けるボタンを押した。
 すると轟天号の船体のハッチが開きミサイルが顔を出した。

ゴジラにのしかかったサンドラは何かを感じた様子で振り向くと口から青い球を吐き出した。
ニックは
「サンドラの口から何かが放たれました!」
ゴードン大佐が
「よしプロトンミサイルで応戦しろ!」
轟天号は船体から数発のプロトンミサイルを放ち、青い球を攻
撃した。しかしそのミサイルは青い球に触れた瞬間、そのまま
爆発する事も無く凍りつき、次々と墜落した。
墜落したプロトンミサイルはまるでガラスのコップを床に落と
したかの如く、地面で「バリン!」と音を立てて割れた。
ニックは
「青い球の分析の結果!マイナス120度の冷凍光線だと分かりました!」
グレンはレーダーを見ながら
「まだ何個か残っています!」
ゴードン大佐は
「こっちも冷凍バリアを展開し、回避しろ!」
と命令した。

 ロープで両手足を繋がれていたジェレルは薄らと意識を取り戻した。
見渡すと病室に似た部屋がぼんやりと見えた。
そして見張りをしていたレイの顔が目の前に現れ
「ようやく目覚めたわね!」
と言った。
だんだん意識がはっきりとしてきたジェレルは
「お前……」
とつぶやいた。
レイは微笑を浮かべるとロシア語で
「ここは網走厚生病院よ!あなた達の仲間がここに来るのも時
間の問題ね……それまであなたは殺さないわ!
ちなみにレーザー銃や拳銃はホルスターごと頂いたわ!」
と言うとそれを取り出し遠くへ投げ捨てた。
ジェレルは
「何が目的だ……望みは何だ……」
と言った。レイは思わぬ事を口にした。
「復讐よ……ガーニャ、ジーナ、サミー……母と仲間達の仇よ!」
ジェレルは
「俺を囮に彼らを呼び寄せる気なのか?」
レイはその質問には答えず
「数年前にあいつらはあたしが生まれた後に母と仲間達を焼き
殺し、そしてあたしは必死に逃げ出したわ!」
僅かに憎しみと喜びが入り混じった表情で微笑した。
ジェレルはその微笑に思わず背中が凍り付くのを感じた。
 彼はこれほど女性に恐怖を感じた事は無かった。
レイは
「でも……それはどうでも良くなったわ……」
と言って更に接近したのでジェレルはすぐに身構えようとした
が、両手足を柱に縛りつけられていて身動きが出来なかった。
レイは
「きっと……メイスンはどうせあたしを裏切るつもりかも知れ
ないし……レベッカも最近怪しい行動をしているわ……だから
早めに手を打たないとね!」
レイの目は明らかに狂気を帯びていた。
しばらくして
「あなたは女が好きかしら?」
ジェレルが大声で
「どうでもいいだろ!!」
レイは
「あなたには彼女がいる。アヤノとかいう名前のね!」
ジェレルは
「それがどうした!」
レイは
「そんな女忘れさせてあげる!」
と言った。
その途端、「バーン!」と破裂する音と共に8本の触手が腹から飛び出し、
ジェレルの首にその内の2本の触手が巻き付いた。
そして残りの4本はジェレルの衣服を破り、
もう2本の触手は下腹部に向かって入って行った。
彼は首を絞められ呼吸困難になった。
さらに2本の触手が下腹部に向かって行った。
同時に下腹部に強烈な痛みが走った。
体をくねらせ抵抗したが、無駄だった。
殺される!このままじゃ!と思った時、銃声が2発聞こえた。
ジェレルが見ると部屋のドアの前にアヤノがいた。
 アヤノが撃った銃弾は首に巻き付いていた2本の触手を切り裂いた。
ジェレルの首が自由になり、激しく咳込んだ。
レイは
怒り狂い
「この女あぁーっ」
と唸り声を上げ襲いかかった。
 再びアヤノが銃を構え、引き金を引き、発砲した。アヤノが
発砲した拳銃の弾はレイの右足、左足を見事な射撃力で打ち抜いた。
レイはその場に倒れ、ジェレルに向けていた触手をアヤノに向かって伸ばそうとした。
 しかし、そこにレベッカとメイスンが現れたかと思うと、
2人は同時に拳銃を抜いて引き金を引き、レイの額を打ち抜いた。
触手はアヤノの目の前で止まり、次々と床に落下した。
 レベッカとメイスンはすぐに廊下を走り出し逃げ出した。
 アヤノはあわててジェレルの両手両足の特殊な縄を解いてメ
イスンとレベッカの後を追ったが、すぐに見失った。
 逃げ切ったレベッカとメイスンはある部屋に逃げ込み、
息を切らしつつも
「これで……邪魔者はまた一人消えたわ!」
とメイスン。
「後は策略家のシャランをどう殺して?サンドラのウィルスに
関するデータを盗むの?」
レベッカ
「復讐の鬼になって自分の立場を見失ったあいつは危険よ!」
とメイスン。
2人は微笑してその場に座り込んだ。

 網走市内の別の病院で怪我の手当てを受けたジュンは、
事情聴取に来た国際警察官に
「お願い……うちの娘を……救い出して……それを地球防衛軍
のミュータント兵やガーニャ達に……伝えて……」
とかすれた声で訴えた。
さらにジュンは
「実は……彼女は……あたしに助けを求めて来たの……この事件が起こる数か月前だったわ……」
と娘と自分について語り始めた。

(第44章に続く)