(第49章)僅かな記憶と憎しみ

(第49章)僅かな記憶と憎しみ

サンドラは網走厚生病院の上空を飛行していた。
その時、病院内にいた蓮と凛の表情が険しくなり
「サンドラが……僅かな記憶をたどって!ここの広場にいる!」
ガーニャは
「なんだって??」
と驚いて言った。
凛の護衛や地元の警察官や機動隊、国際警察は訳の分から
無いという顔で2人の険しい表情を見ていた。
レベッカ
「なんなの?脅しのつもり?だったら甘いわね!」
と言って手に持っていたスイッチらしきものを取り出した。
ガーニャはそれを見て
「まさか?起爆スイッチ!」
レベッカ
「動かないで!じゃないと人質と他の証拠と共に消えてもらうわよ!」
と大声で怒鳴った。
その時、「ドーン!」と言う大きな音が聞こえ、病院全体が大きく横に揺れた。
レベッカは何とかバランスを保ち、起爆スイッチを持った。

外では広場に着陸したサンドラが大きな咆哮を上げていた。
しかし突然サンドラは漆黒のプテラノドンの様な両翼を閉じ、
その場に座り込み、じっと動かなくなった。

 病院の上空を轟天号が飛行していた。
ニックが
「サンドラ!突然!動きが停止しました!」
グレンは突然の出来事に驚き
「どうなっているんだ!」
尾崎が
「サンドラの頭部から何か紫色の物体が現れました!」
サンドラの頭部から紫色の物体が現れ、その物体は真っ直ぐ網走厚生病院の
シャラン、メイスン、レベッカのいる病棟の窓を破壊し中へ入って行った。
「ガシャーン!」と言うガラスの割れる音を聞き付けたメイスンは
「何なの?」
しばらくして、「ガーン!」という大きな音が聞こえ、
隣にあった機材室の部屋のドアを破壊し、人のような生物が現れた。
全身が紫のゴジラに似た鱗に覆われ、両腕にヒグマの様な鋭い爪を持つ、人型の生物。
裸の女性にも見えた。
その顔を見たメイスンは震える声で
「サンドラ??」
レベッカが見ると背中は紫色の太い触手で外に繋がっていた。
やがてサンドラは真っ赤な両眼を開けると
「憎い……」
とつぶやいた。
レベッカ
「まさか?彼女は怪獣化したんじゃ……」
その瞬間、サンドラはヒグマの様な右腕を壁に突き刺した。
ガーニャや男性元FBI捜査官は
「マズイ!みんな!ドアや壁や柱から離れるんだ!」
すると病棟のドアや壁や柱がみるみる凍りつき、
進路にあったプラスチック爆弾の入った木箱も凍り、最終的に全て粉々に消滅してしまった。
サンドラはまた左手を突き刺し、同じ様にレベッカが念入りにドアや壁、
柱に仕掛けたプラスチック爆弾を凍らせ粉々に消滅させた。
 壁際から離れた大勢の機動隊、国際警察や地元の警官はその
壁を見て驚愕した。壁や柱はまるで穴を掘ったかの如く深くえぐれていた。
メイスンは驚きのあまり
「そんな……」
とつぶやいた。
生気の無いサンドラの顔がシャランに向けられた。
シャランは憤慨し
「なによ!騙されたあなたが悪いんでしょ!」
と怒鳴り散らすと8本の触手をサンドラの身体に突き刺した。
けれどもその瞬間、バリバリと音が聞こえ、触手が凍りついた。
 シャランはロシア人の女性に戻り、恐怖の顔を浮かべた。
サンドラが微笑を浮かべると、シャランの8本の触手が一気に凍りつき、
シャランは悲鳴を上げる間も無く、全身凍り付けになった。
サンドラは微笑から笑顔をになった瞬間、一瞬でガラスが割れる音と共に粉々に粉砕され消滅した。
洋子は悲鳴を上げ、両手で顔を覆い視線を逸らした。
凛は
「本物のサンドラじゃないわ!恐らく意識だけが……」
メイスンやレベッカは恐怖のあまり足が強張り、動けなかった。
ガーニャは
「まさか?サンドラ…やめるんだ!」
しかし彼の言葉は届かなかった。
サンドラは
「あと2人……」
とつぶやくと
メイスンにゆっくりと近づいた。
彼女は恐怖で怯えは涙目で
「御免なさい!助けて……お願い……」
と悲鳴に近い声を上げた。
それが最後の言葉となった。
サンドラは両手の鋭い爪をメイスンの腹に突き刺し、
持ち上げるとそのまま元FBI捜査官と凛の護衛に向かって投げ捨てた。
シャランは凍りつけになり、粉砕され、その破片が2人に降り積もり、2人は驚いて尻もちをついた。
FBI捜査官は
「冷たい!まさか?嘘だろ……」
凛の護衛も
「なんて力だ……人二人が粉々だ!」
それから彼女は裸のまま長野先生と洋子、レベッカに向かって振り向いた。
その瞬間、蓮の脳裏に以前夢で見た「サンドラが洋子と長野先
生をヒグマの様な爪で切り殺す」映像が流れた。
いや……切り殺すのでは無く犠牲となった3人の様に……凍りついて粉砕される。
凛の脳裏には逆に「サンドラが長野先生と洋子をヒグマの様な
爪で殺そうとするが男と自分の呼びかけで我に返り、2人の命が助かる」映像を見た。
2人は悟った。今がこの瞬間なんだと!

(第50章に続く)