(第53章)蓮、優香、終わらないデストロイアの苦しみ……

(第53章)蓮、優香終わらないデストロイアの苦しみ……

放課後、凛と山岸が帰ったのを見計らい、友紀は蓮のいる所へ行った。
そこは器具室で、今はただの物置になっている所である。
友紀はそこに入り蓮の名前を呼んだ。
しかし返事は無かった。
友紀は少し暗く埃っぽい狭い隙間に入り込み、
蓮を探したがどこにも見当たらなかった。
友紀は
「帰っちゃったのかな?」
と思い自分も帰ろうとした時、誰かに手を掴まれた。
友紀は驚きその方を向いた。
それは蓮だった。
「来てくれたんだ……今帰ろうとしたんだけど……」
友紀はほっとした様子で
「もう!ビックリさせないでよ!」
と言った。蓮は
「御免……」
と言うと友紀にキスをした。友紀は
「ねえ、ひょっとしてあたしの事好き?」
と聞いた。
蓮は
「本当は『君を好きになっては駄目』と頭では分かっているんだ!でも!
もう我慢できなくて!君の事が本当に好きなんだ!」
友紀は
「そう……いいわよ!付き合ってあげる!だけど今日は5時までよ!」
と言った。友紀もうれしかったのである。
それまで、友紀は綺麗なわりには親のせいで、誰からも告白されたことがなかった。
蓮は嬉しそうな笑顔を見せた。そして友紀の髪に優しく触れながら、
頷くと再び唇にキスをして、今度は友紀の首筋にキスをした。
5時頃、友紀と蓮は外へ出た。
蓮は脱いでいた上着を着直し服
のボタンをはめると、カバンを持って友紀に
「じゃあ!また明日!今日来てくれて本当にありがとう!」と言うと帰って行った。
友紀は蓮のうしろ姿をいつまでも見送りながら、自分の唇を軽く触り
「あたし今まで一度も真剣に恋したこと無かった……なんか身体が変な感じ……」
と言うと、夢うつつの状態のまま家へ帰って行った。

地球防衛軍の「国連テロ対策」にある「怪獣情報部」
特別室で凛の護衛がまたパソコンで文章を書いていた。
地球防衛軍最高機密文章」「音無凛に関する監視報告書」
「彼女を誘拐した中国の組織はX星人の力を借り、
彼女の体内にギドラの性ホルモンと攻撃ホルモンを担当医師から注射させた。
その後、彼女の体内で急激な変化が現れ、
ギドラの本能が目覚める恐れがある事から射殺の可能性を示唆したが
幸いにも彼女の体内のG塩基がその2つのホルモンを中和したので再び正常に戻った。
その為、暗殺計画も中止され、彼女のG塩基が、ホルモン物質であれ毒物であれ
中和してしまう事が分かり、彼女を兵器として利用する計画は白紙となった。
また凛を利用しようとしていた薬品企業の『レオパス社』も
その凛誘拐事件の事実をFBIに公表され最終的に自己破産した。

別の中国の日系企業も倒産の危機に見舞われた。
彼女は自らの手を汚すこと無く、それぞれの会社に大打撃を与えたのである。
上海の街に凛を助けに来たクラスメートが撮った
ゴジラバガンの戦いを収めた8ミリフィルムは世界中のニュースで放映され、注目を集めている。
また中国の田舎町に原爆が落ちた映像
や1年前に現れた怪獣達が暴れ回る映像を誤報と公式発表した。
今後も監視を続ける予定。以上」
文章はCCIや国連、地球防衛軍に送信された。

その特別室に許可を得た尾崎が入って来た。
そして凛の護衛の
隣で同じ様な最高機密文章をパソコンで書き始めた。
「山根蓮に関する監視報告書」
「彼が強い数学の才能を持ち合わせていた為、彼の学習能力を探るべく
凛と同じ高校に通わせる事にした。
双方を監視しやすいからでもある。
しかしあのデストロイア事件から立ち直れない
母親の山根優香は現在も息子を恐れて避ける様にテレビアナウンサーの仕事を
深夜までやっている模様。
また一言も息子の蓮とは口も利かない。
蓮も母親の事情は頭で分かっていても何故拒絶されているのか悩んでいる。
凛に激しい憎しみを抱いており、それが原因で学校では
他のクラスメートとは口も利かずいつもどこかに隠れている。
凛の友達で中国でも一緒だった友達のクラスメートと恋をしているようだ。
今後も監視を続ける予定。以上」
尾崎はそれを送信した。
そして2人はその特別室から出て行った。

凛は休み時間にクラスで噂になっていた『豆人間』の話を洋子に聞かされていた。
凛は苦笑しながら聞いていたが洋子はあくまでもまじめだった。
しかし笑いながらもまたクラスの友達と
仲良く会話出来た事に、尾崎やゴードン大佐を始め、凛の護衛
(名前は知らない)や米軍達、アメリカのミュータント兵達に感謝をした。
凛は今小説家になることを夢見ていた。
凛の大きな夢は夢は叶うだろうか?
蓮の心の傷を誰が直すのだろうか?それは友紀なのか?
その答えはまた別の機会に書こう。

(終章に続く)