(第25章)2人の科学者

(第25章)2人の科学者

 

国連の車に乗った3人は江東区木場の国連物理学研究所へ行く前に、
地球防衛軍本部に隣接していて友紀が入院している『特殊生物病院』へ向かった。
その途中凛が窓を開けて東京湾の海岸を見ると、戦車やメ―サ殺銃光線車が並び、上空を見ると、
ランブリングやエクレール等の戦艦が八重洲に向かって飛んでいた。
東京湾の海底では3体のゴジラがさらに海底に潜ってレーダーの追跡から逃れていた。
車は『特殊病院』に着いた。
健吉の姉、山根優香の病室にはいる前に、また3人は感染症防止の為、
消毒液を両手に付けクリーンウェアーとマスクを着用し、凛の護衛に従って
優香の病室に入って行った。
健太郎
「姉さん……」
と言うと病室のベッドで寝ている優香に駆け寄った。
凛は
「まさかまたデストロイアに?」
健太郎
「よかった……無事だったんだ!」
しかし優香は無表情で口を半開きにしてぼっとしていた。
健太郎
「どうしたの?姉さん!」
優香は
「どうしよう……」
とつぶやいた。健太郎は訳が分からず
「大丈夫!ここにいれば!」
と優しく声をかけた。
しかし優香は突然泣き始めた。
健太郎
「一体何が?」
そこにクリーンウェアーとマスクを着用した尾崎と医師の祥郷が入って来た。
尾崎は健吉を呼び出した。
3人は病室を出て、尾崎と医師の祥郷と共に地下の特殊生物保管庫へ案内された。
そこには人間サイズの保育器のようなものがあった。
また隣には人間サイズのゾエア幼生の抜け殻が
入ったホルマリン漬けのカプセルがあった。
保育器の中を見ると何かが蠢いていた。
尾崎は健吉にその怪獣の正体を明かした。
地球防衛軍特殊生物保管庫で、健太郎は信じられない様に口を開け
「そんな……嘘だ!嘘だ!あれが姉さんから生まれたなんて!デストロイアの子供だなんて!」
と両手で頭を抱えて座り込んだ。
凛はそれを聞いて
「そんな……ありえないわ!」
美雪も
「嘘でしょ!」
凛はデストロイアに対して激しい憎しみと憤りを感じた。
尾崎は
「ですから……彼女にこの現実を受け入れさせなくてはいけません!
その為に協力してください!」
健太郎は怒りに震えながら
「どうして中絶しなかったんですか?」
尾崎は
「時間はありませんでした。怪獣の成長があまりにも早かったからです!
それに、手術は危険だったんです」
健太郎
「あなた達は怪獣の専門家でしょ?!どうして!」
尾崎は厳しい声で
「優香さんの命を最優先したのです!
デストロイアの恐ろしさは母やご家族の話からご存知のはずです!
これからカウンセラーの精神的なケアーを始めます!
どうか彼女の為に協力して上げて下さい!
お兄さんのあなたがこの現実を受け入れなければ!
あなたの姉さんもこの現実を受け入れる事が出来ません!」
と言った。
健太郎は無力感で胸がいっぱいになった。

 

その後3人は病院を後にし、隣の国連物理科学研究所へ到着した。
オキシジェン・デストロイアに近い働きをする
ミクロオキシゲンを発見した伊集院研作博士を訪ねた。
芹澤博士の生まれ変わりである凛は初めて伊集院博士と出会った。
伊集院博士が3人を迎え入れると健吉は
「どうも!お久しぶりです!山根健太郎です!」
と言った。
伊集院博士が
「あなたがゆかりさんの子供さん!初めまして!」
と言って二人は握手した。
凛は
「初めまして!伊集院博士。音無凛です!こちらが母親の美雪です!」
と自分と母親を自己紹介した。
伊集院博士は挨拶が済むとため息を付きながら
「まさかデストロイアが生きていたなんて……一体どうやって生き残ったんだ!私はそれが知りたい!」
美雪はデストロイアがどうやって生き残ったのか分かっている範囲を説明した。

 

(第26章に続く)