(第83章)アルカードKを探せ!

こんばんわ畑内です。
あと一つでゴジラの自作小説
(シーズンⅣ)は完結です。

(第83章)アルカードKを探せ!

長野先生の部屋の金色のドアノブに
「仕事中!立ち入り厳禁!」
と書かれていた。
部屋の中では長野先生がベッドに眠りながらヘッドホンで何かを聞いていた。
それは音楽では無く誰かの会話だった。
「そんな……無茶だ!」
「無茶では無い!地球人のCCIと国連の連中をうまく利用すれば!」
「そんな……あのバガン族のゴジラを生け捕りしろなんて!」
「傷一つも付けずに、だ!」
「そんなメチャクチャな!我々ノスフェラトゥ
ともかく人類に奴を捕まえさせるの無理に決まっています!」
しかし突然「ゴォルル!」と言う獣の唸り声が聞こえ
「やれと言ったら!やるんだ!それに!ノスフェラトゥ
言うX星人がつけた忌まわしい名前を二度と口にするな!
我々ゼイリュ族はギドラ族やバガン族と同じく誇り高き高貴な部族なのだ!
それに比べてゲンヴ族はX星人が付けた忌わしい名前を受け入れ!
元の形態を捨て人間と同化して子孫を残そうと考えている!」
「それでは?バガン族とギドラ族の血を受け継いでいる凛
と言う少女やデストロイアから生まれた蓮と言う少年は?」
「それよりも!まずはゴジラを生け捕りにするんだ!」
「生け捕りにしてG血清を作るつもりですか?」
「そうだ!M塩基や暁のアメーバを無力化させるG血清を作り出す事に成功すれば!
太古の昔から我々種族や地球人の自由を脅かして来たX星人の支配から自由になり!
この地球でX星人より長く、自分達の形態を維持している
我々種族と共に地球人も生き延びる事が出来るだろう……
ただ!その夢の血清の完成と実現の為にまずはゴジラ細胞に含まれるオルガナイザーG1
が原因で起こる突然変異を100%抑制させる方法を研究しなくては……
そして夢の血清が完成されれば!
すぐに大量生産して!G血清を我々故郷の小惑星に送る事が出来る!
とにかく!ゴジラの生捕りとアルカードKを探せ!」
とまで聞いた後、長野先生は起き上がり録音テープのスイッチを切り、
ヘッドホンを外し大きく両手を上げ、欠伸をして
「うーん」と背伸びをすると
「つまり……ゴジラ細胞を使った無敵の血清を大量生産して、
故郷の小惑星の仲間や、ギドラやバガン達まで治療出来る!
つまりそういう事ね!
もしかしたら地球人の癌やその他の病気も治療出来るかも?
それにしてもアルカードKって何かしら?」
と考えながら言うとベッドに座り、冬休み明けの国語の授業の準備を始めた。
その翌朝全員、8時に起床し、朝ご飯を食べ、再びバスに乗って千歳の空港へ向かって行った。
凛がふと周りを見てみると、全員疲れ切った様子で、小野さん、
江黒、中山君は口を半開きにして未だに爆睡していた。
ユキも疲れ切っていてほとんど会話せず、うたた寝をしていた。
山岸も同じだった。
すると隣にいた蓮が
「あの事件の後じゃ無理も無いな……」
凛は
「そうね……空港に着くまで静かにしてましょ……」
蓮は憂鬱な顔で
「はあ……空港にはマスコミが待ち構えているかもな……」
凛も同じ顔で
「とんでもない修学旅行になったわね……」
それからしばらく沈黙していた蓮は
「今日……帰ったら……もう一度改めて話しがしたい……」
凛は
「両親と?」
蓮は少し笑いながら
「まあ……そういう事だ!」
その後、千歳空港に着いた凛のクラス一行は無事に東京行の便に乗り東京へ帰って行った。

それから一ヶ月後。
優香と蓮はカウンセラーと共に、今後デストロイアのトラウマとどう向き合うか話し合った。
2人は何処から話したらいいのか分からず天井を見上げ、ただ考え込んでいた。
カウンセラーは
「落ち着いて……静かに自然に話せばいいのよ!」
とアドバイスした。しかしそれでも2人は沈黙したまま何も話さず、カウンセラーは一度休憩して、
何を話したらいいのかもう一度別々の部屋でじっくり考えましょうと提案した。
それから一度、蓮は自分の部屋へ行き、優香は自宅の居間で
リラックスの為にテレビを見ていた。
 テレビでは音無杏奈がマイクを持ち
「ここ数ヵ月に失踪したホームレスの数は30人になりました!
失踪したホームレスのほとんどが世界金融危機の影響で派遣契約を打ち切られ!
職や住む場所を失った人々です!」
と言う所でゆかりはテレビのスイッチを切った。
それから優香と蓮はもう一度、お互い向き合い話し合おうと、
そのきっかけを長い間、待ち続けていた。
優香はとうとう恐る恐る口を開き、息子が怖くて避けるように
アナウンサーの仕事を今まで続けた事を話した。
蓮は、母親の事情が頭で分かっていても、何故拒絶されているのか悩んでいた事。
さらにそれが主な原因でイライラしていてその母親に対する怒りや不安を、
父親のデストロイアを殺された激しい憎悪に変えて、友達の凛にぶつけ、
いつも喧嘩ばかりしていて、クラスの友達と口も利かず学校で問題ばかりを起こしていた事、
自分が安心できる場所が無かった事を話した。
二人はお互いの気持ちを静かに語り合った。
優香は静かに泣き出し
「今まで……御免なさい……」
蓮は
「俺の方こそ……御免なさい……」
とお互い謝った。
そこにカウンセラーが
「お互い……デストロイアのトラウマに向き合う勇気がありますか?」
と質問した。
2人は同時に
「あります!」
と答えた。
やがて蓮は決意した表情で
「僕は!この世界に生まれた事を後悔しないように最後まで生きたいです!」
カウンセラーと優香は突然の大きな声に驚き、目を丸くして
その決意した蓮の輝いた顔を見た。
優香の表情が安心した顔に変わり、とうとう箍が外れ、静かに嗚咽を漏らした。
優香は
「あたしも……」
と言った。
それから3人は午後0時に年越しソバを食べた。
それ以来、優香と蓮は親子の絆を取り戻した。
日本が正月を迎えた。
山岸、凛、蓮、洋子、ユキは袴と着物を着て神社に初もうで
に行き、凛は今度の卒業試験に受かるように、
1時間、何度も何度も神社の金を鳴らし祈り続けた。
合格祈願の札も5つ作り、それを木に吊るした。
その様子を見ていた蓮は唖然とした顔で
「そんなに吊るすものなのか?」
洋子は
「彼女は……理系が苦手で必死なの……」
とヒソヒソ声で言った。
蓮は
「そうか?なるほど……」
と納得した顔で言った。
神社の周りには風に吹かれた粉雪が舞い散り、厳かな雰囲気を漂わせていた。

(終章に続く)