(第6章)カウセリング・ナイトメアー

(第6章)カウセリング・ナイトメアー

怪しげなカウンセラーにカウセリングを受けていた凛はやがて呟くように
凛は父親の行方の手掛かりを掴む為に怪しげなカウンセラーにカウセリングを受けていた。
カウンセラーは
「あなたは前世の記憶を辿っています……あなたは今どこにいますか?」
凛はしばらくして
「狭い部屋?研究所……」
とつぶやいた。
そしてカウンセラーは眠った様に目を閉じた凛の顔を見ながら
「あなたは男性ですか?女性ですか?」
凛は
「男性です!!」
と答えた。
カウンセラーはさらに
「名前は?」と尋ねた。
凛は「芹沢大助」
カウンセラーは
「日本人ね……仕事は何しているの?」
凛は
「仕事は酸素の研究をしています」
カウンセラーは
「へえ!!」と驚いていた。
しかし凛は突然何かに脅えて苦悩の表情になった。
「怖い……酸素をあらゆる角度から研究した末に」
カウンセラーは心配そうに
「どうしたの?」
凛は苦悩しながら
「水中の酸素を一瞬で破壊して破壊して、あらゆる生物を液化させる……恐怖の
薬品」
カウンセラーはだんだん怖くなってきたが、とうとう
「それは何?」と尋ねた。
凛は大声ではっきりと発音した。
「オキシジェン・デストロイヤー!!」
カウンセラーは聞きなれない名前に少し戸惑いながらも
「それはどういう意味なの?」
と思わず聞き返した。凛は再びはっきりと
「水中酸素破壊剤」
と言うと怒ったように「もう二度と言わせないでください!!」と言った。
「御免なさい……」と謝ると額から流れる汗をぬぐって、
カウンセラーはハンカチをポケットにしまいながら
「歳は?」
と全く別の質問をした。
凛は「27歳です」
と答えた。
「山根博士の娘……恵美子さんがいます……」
凛は少し笑いながら「恵美子さんとは小さい頃からの許婚でした……」
と懐かしそうに言った。
カウンセラーが
「それじや!?ご結婚はなされたのですか?」
と質問した。凛は悲しそうに
「できませんでした……」
と答え、カウンセラーは
「どうして?」
凛は「戦争で顔に大火傷を負って……彼女に見せるのが怖くて……」
カウンセラーが「だから……研究所に閉じこもって……」
すると凛は突然大声で
「そうです!!その為にあんな危険な薬品を!!」
と激しい憎しみと悲しみに顔を歪ませながら言った。
カウンセラーはびっくりして腰を抜かしそうになった。
凛は狂ったように
「戦争で私の顔に大火傷を負わせた兵器や軍!!1954年に東京を蹂躙して、
大勢の命を奪ったゴジラも憎い!!そしてあの危険な薬品も!!」
と大声で怒鳴り続けた。
カウンセラーは凛の大声に圧倒されて何も言えなくなった。
凛は少し穏やかになり
「しかし……二度とこの薬品が開発されないように設計図や全ての資料を燃やし
ました……そしてゴジラと共に。彼女の幸せを願いながら……」
カウンセラーは
「亡くなったの?」
凛はうなずいた。
カウンセラーがそろそろ凛を起こして終わらせようと思った時、凛がつぶやいた。
「ここはどこ?」
カウンセラーが驚いた様に
「もう……カウセリングは終わりにしましょう!!」
と呼びかけたが、凛は無表情で
「時間が戻っていく……1954年からずっと前まで……」
とつぶやいた。
カウンセラーは驚愕した。
なんと凛はカウンセラーの助けも無しに自ら過去をさかのぼっていた。
しばらくして凛は「南シナ海?エベレストを飲み込む程の深い谷と山脈が見える?」
と言った直後、凛は突然
「熱い!!痛い!!切られた!!」と叫んだ。
カウンセラーは驚いて「落ち着いて!!何に切られたの?」
凛は「コウモリの様な大群に!?」
カウンセラーはびっくりしてイスからずり落ちそうになった。
凛は「怖い!!殺される!!でも戦わねば!!大陸が沈んでみんな死ぬ。
全てあたしの責任だから!!」
と訳の分からない事を言い出した。
カウンセラーは混乱して
「大陸って?コウモリの様な大群って何なの?あなたは誰なの?」
と必死に叫んだ。
凛は「若い娘……」とつぶやいた。
カウンセラーはおずおずと「若い娘って?」と尋ねた。
凛は「思い出せない……科学者だった……」
カウンセラーは
「科学者なのね?その科学者は何の研究をしているの?」
凛の口から不思議な言葉が飛び出した。
アトランティス……超古代文明……そして生体兵器……『玄武』。コウモリの
様な怪獣は『朱雀の実験用生体兵器』達……」
カウンセラーはずり落ちかけた状態から、今度はもうイスからずり落ちそうになった。
凛は「殺される!!口を大きく開けて迫ってくる!!キャアアアアッ!!」
と絶叫した。カウンセラーはビックリしてとうとうイスからまるでコントか何か
の様にすさまじい落ち方をしてフローリングに腰を強く打った。
やがて凛は静かになった。
カウンセラーは腰を片手で押えながらようやく自分で立ち上がり、どうにか彼女
を起こすことが出来た。凛は我に返り呆然としてカウンセラーの疲れきった顔を
見つめていた。凛の体から冷汗が流れて背筋が凍りついていた。
今まで悪夢を見ていたようだった。
凛は泣きたくなったがグッとこらえると
カウンセラーに父の手掛かりが見つかったかどうか尋ねようとしたがカウンセラ
ーは疲れ果てていてとても答えてくれそうに無かったのでとりあえず
「何か分かったら連絡をください」
とだけ言うと、カウンセラーの部屋を出て行った。
自宅の前までくると涙をこらえきれず電柱の陰で大泣きした。

地球防衛軍の護衛の一人がパソコンのメールに何やら文章を書き始めた。
地球防衛軍国連最高機密」
「音無凛に関する監視報告書」
文章は続いた。
「中学校では小学校と同じく特に危険な力は見られない……
いじめに遭うが『例の生物』の危険な力を発揮すること無く全て人間的な知能で
乗り越えている様子。教室ではアイドル的存在になり、男子生徒からラブレター
やファンレターがよく送られてくる。本人はあまり気にしないようだった。」
と笑いながらさらに続きを書いた。
「怪しげな自称カウンセラーにカウセリングを受ける。しかし後に金儲けを目的
とする『詐欺師』と判明したその女性は逮捕された。凛はカウンセラーの正体が
詐欺師だったという事は全く知らなかったようだ。
カウンセラーは『薬で眠らせて暗示をかけて、前世の記憶は自分が作っている』
と語っていたが、凛をカウセリングした時は『突然本物の前世を語りだして驚き
ました!!何の事だかさっぱり!!』と供述した。この詐欺師の言うことは全く
分からないが、凛からだまし取った金はない模様……。
凛は父の行方を探し回っているようで、母親に反抗して父の行方がどこなのか問
い詰めていた。」
「高校でも特に変わった様子は無し、普通の生活を続けている。生まれつき『例
の生物』の本能が無いか、完全に制御している模様だ。友達も普通におり、女な
がらボクシングに熱中している。時々色々な所でシャドーボクシングをやってい
る。二度と怪しい所へは行かなくなっている。引き続き監視を続ける予定……以
上」
そして文章は内閣や国連の関係者達に送信された。
凛は毎日自宅に帰ると深夜にゲームをしていた。
今まで相談する相手であったカウンセラーが居なくなったので、かわりにコント
ローラに取り付けられたマイクでゲーム画面の人面魚に自分の悩みを相談するよ
うになった。
実はこのゲームを作ったのは金田トオルの弟だった。
今日も凛はテレビ画面の水槽の中の人面魚に父親の事を相談していた。

(第7章に続く)

今日の朝の変更はここまでです。
また次も分けたらドンドン載せていきます。

では♪♪