(第23章)怪獣とは?

(第23章)怪獣とは?

 

地球防衛軍本部の病院の、優香の病室に現れたゾエア幼生の様な怪獣は、
優香の傍で満足して眠っていた。
その隙に捕獲され、地下の特殊生物研究所に生きたまま保存された。
それから間も無くして、特殊生物地下研究所の保管庫から警報が鳴った。
尾崎達はその場所に急いだ。
しかし保存庫をいくら回っても異常が無かった為、誤報とみなされた。

 

東京の港街を歩いていた凛と山岸はコンクリートの堤防の壁に寄りかかり、
「あたしにとってゴジラや怪獣達はどういう存在なのかずっと考えていたの」
と言った。
そしてふと笑いながら凛は
「やっぱりこれも運命かな?」
山岸は
「俺にはよく分からないけど……」
と頭を掻いた。
凛は
「あたし……巫女になるの」
山岸は
「何の事?神社で仕事するの?」
凛は
「家は仏教だけど……」
と言い続けて
ゴジラの巫女よ!」
と答えた。山岸は再び驚いて
「こりゃ~おったまげ~」
と言った。凛は自分がおかしな事を言っているのに苦笑しながら
「寒い……」
と赤いマフラーを巻き直した。
山岸は
「大丈夫?」と聞いた。
凛は
「平気よ……」と答えた。
東京の港街を歩いていた凛はコンクリートの堤防の壁から離れて再び歩き出した。
やがて凛は
「山岸君はゴジラや怪獣をどう思っているの?」
山岸は
「うーん難しい質問ですな~」
凛は
「どうして?」
と聞いた。
「だってX星人から人類を救ったのもゴジラだし……」
凛は
ゴジラはただの人殺しよ!」
と憎々しげに言った。
山岸は
「オイオイ……どうしたの?さっきから変だよ凛ちゃん」
と少し動揺した様に言った。

 

地球防衛軍本部にある病院では、医師の祥郷とカウンセラーと
尾崎が優香の今後のケアーについて話していた。
カウンセラーは
「それで……優香さんの場合……本人は元気なように装っていますが
精神的には不安定です……それに私も驚きましたが、
この怪獣の襲撃のケースは前例が無いので、よく分かりませんが、
優香さんは最近1回デストロイアに襲われた恐怖体験を持っていますね。
さらに今回またデストロイアに襲われたため、
過去の精神的な傷が深くなっている可能性が高いです。
とても言いにくい事ですが……突然デストロイアに襲われて
体内にデストロイアの幼体を宿され、
出産のようにその幼体が生まれてしまった。
この現実を彼女はまだ受け入れる準備が出来ていません」
尾崎は
「それじゃ……」
カウンセラーは
「授乳できるほどの急激なホルモンによる身体の変化もあり、
まだ心が追い付いていません。
以前と比べて怒りっぽくなったり、イライラしたりと言った状態が現れています。
しかしこれまでの経過と身体の変化を冷静に見つめ直した時、
彼女はその現実に絶望や不安を覚えるでしょう」
尾崎は
「それでは?どうすればいいんですか?」
カウンセラーは
「彼女が現実を受け入れるのを手伝わなくてはいけません。
あなたのような優しい友人や家族、兄弟、そういった人達の協力が必要です!」
と言った。
尾崎は
「それでは……真実は家族に話すべきですね!」
カウンセラーは
「出来ればそれが望ましいわ……けれど信じてくれるかどうか……
家族もその現実を受け入れなくてはなりません。私も出来る限り協力しましょう!」
と言った。尾崎は
「お願いします!」
と椅子から立ち上がり、礼をするとカウセリング専門の施設から出て行った。
そして尾崎は指令室で、波川司令にかつて覇王が自分から進んで美雪の警護をした
様に、優香の警護を自ら進んで依頼した。
もちろん波川司令はそれを許可した。

 

(第24章に続く)