(終章)父への想い(後編)

(終章)父への想い(後編)

美雪はまた笑いながら
「一緒にいる内に、無愛想な癖に指輪を買っちゃたりして最初あたしが
存在すること自体が本人はあまり好きじゃなかったらしいけど!
最後はあたしの存在を認めてくれて……と言うかあたしがいないと駄目だったみたい。
喧嘩は止まらなかったけどね!
だから不器用でも好きなれたんだと思うの……まあ!そんな所かな?」
凛は
「複雑だね……それに比べてあたしの恋は……
中学生の頃に放課後にイジメにあって、逃げ出して防波堤で泣いていた時
にジュニアに初めて会ったの……それでもの凄くカッコよく見えて……一目ぼれしたのかな?
でもあたしには別に人間の男の子の山岸君がいて、彼もあたしに一目ぼれしてたの……
でも最後は見事!ジュニアにフラれたわ!なんだか切ない恋だったわ……
それで最近その……山岸君に告白されて!あたしどうしようか迷っているの!」
と返した。美雪は驚いていたが
「さあ分からないけど……これからゆっくり考えればいいわよ!まだ若いんだし!」
と元気付けた。さらに凛は
「それでね!その話には続きがあるの!その防波堤にね!
いじめていた同級生のクラスメートがやって来てね!
その時、ジュニアがその同級生のクラスメートに向かってものすごい剣幕で吠えたの!
そうしたら!すっかり体中が震えあがってその場で動けなくなったの!
それから同級生はあたしの事を怖がっていじめなくなったの!ちなみにあたしは平気だったけど……」
と中学生の頃の思い出を胸いっぱい語った。夕陽が傾き暗くなりかけた
品川の公園では美雪が再び思い出した様子で
「一番災難な目にあっていたのは尾崎君だったわね!」
凛は
「災難って?」
美雪は
「実はね!常に覇王に振り回されっぱなしで……いつもあたしの事で大喧嘩していたの!」
凛は
「そんな……『優しくてカッコイイ人』って言うイメージが……」
美雪は
「あたしもびっくりしたわ!彼ったら!自分のイメージを
壊してまであたしを愛そうとしたの……それでかなり悩んでいたみたい……
でも!本当はそういう純情な人なの……」
凛は
「それが空回りしちゃったって訳ね!これもギドラのせいかしら?」
美雪は
「何でもかんでもギドラのせいにしないの!可哀そうでしょ!
それに今のあたしがいるのも彼のおかげなんだから!」
とたしなめた。
凛は
「パパ今頃どうしているかな?」
美雪は
「さあ?またどこかの星で暴れているんじゃ無い?」
凛は
「まさか浮気とかしていないわね?」
美雪は
「彼の事だからしないと思うわ!」
凛は
「そうね……無愛想な性格じゃ誰も……ママ以外の女性じゃ!
パパを本気で殴ったり出来ないだろうし……」
ととんでもない事を言った。美雪は顔を赤くして
「何言っているのよ!そんな事をどこで聞いたの?」
凛は澄ました顔で
「グレンさんから……」
と答えた。
美雪は
「本当におしゃべりね!」
凛は
「ママには見える?」
美雪は
「あの小さい生き物達?」
と聞いた。2人がしばらく眺めているとその怪獣の原生物はふと消失した。
凛は
「あーあ残念!消えちゃった!」
原生物達は少しでも、環境が変わると力を失って、
たちまち消えてしまう程、弱々しいものであるらしい。
美雪は
「帰ろっか?」
もうすでに日が暮れて暗くなった。
そこに山岸と友紀の両親が歩いて来た。
友紀は
「ここで何しているの?」
凛は
「いや!ちょっと話し込んでいたの!」
と答えた。山岸は
「この後どこかに行こうか?」
と照れ隠しをしながら質問した。
凛は
「いいわ……ありがとう!もう帰るから!」
と答えた。友紀は
「また学校で!」
と言うと両親と帰って行った。山岸はカメラを取り出そうとしたが今日はやめておいた。
そして
「それじゃ!」
とポーズを決めて帰ろうとした時、突然、凛が何かを決心した様に「待って!」
と呼び止めた。
山岸が振り向くと同時に凛は彼の身体を抱き寄せてファーストキスをした。
山岸の両親と美雪は唖然としてその様子を見ていた。
凛は顔を赤くして、
「ありがとう告白してくれて……」
と恥ずかしそうに言った。山岸は
「どうも!」
と反射的に返した。
凛は
「まだ少し迷っているけど……」
と小声で言うとやがて決意した様子で
「好きです!」
とはっきり言った。
山岸も
「俺も!」
とはっきりと答えた。
街灯が灯り始めた。凛は
「じゃあね!」
と言うと美雪と共に車に乗り込み、公園を後にした。一人両親
と残った山岸は車に乗ろうとした。しかしふと海の方をぼーっと眺めながら
「凛ちゃんを守る為にゴジラ達はまたいつか現れるのだろうか?」
とつぶやいた。

(完)

これでゴジラの自作小説(シーズンⅡ)は完結です。