(第38章)覇王圭介の正体!!

(第38章)覇王慶介の正体!!

「あのケーニッヒギドラは……常にあなた達と同じ部屋、同じ場所にいました……」
美雪は
「嘘でしょ?」
小美人は
「私達は嘘を申しません!ケーニッヒギドラは正真正銘、覇王圭介その人です!」
と答えた。美雪の眼前でゴジラとケーニッヒギドラの激しい攻防戦は続いていた。
ケーニッヒギドラは自分の右腕に噛み付いたゴジラの頭部に左腕を勢いよく振り、
強烈な長く鋭い爪の一撃を食らわせた。
ゴジラの頭部から白い火花が激しく散り、眼球の近くまで長い爪跡が1本残った。
互いに強力な爪や牙で噛み付き合い、引っかき合い、
赤い血が地下鉄の駅の柱の残骸や壁に飛び散った。
ゴジラはケーニッヒの腹を力の限り蹴飛ばした。
ケーニッヒギドラは後ろに吹き飛びビルに叩きつけられた。
神宮寺博士からの緊急連絡対応に追われていた波川指令がいた。
波川司令は
「まさか……神宮寺博士そんな……」
電話口で神宮寺博士は
「間違いありません!北海道紋別周辺に住んでいる全ての動物や人間の遺体から
新型のボツリヌス菌が見つかりました!」
波川司令は
「…土地が急激に痩せて木々が枯れた原因もこのボツリヌス菌だと言うの?」
「まだ分かりません!ただはっきりしているのは北海道周辺で死亡した数百人は
どこかでこの新型のボツリヌス菌に感染し、そのボツリヌス菌が吐きだす毒素に
よって全身の神経が麻痺して衰弱死に至ったという事です。不可解な事に、この
新型のボツリヌス菌の感染源はすぐに特定できましたが、その感染源が移動して
いるんです!」
波川司令は訳が分からず
「移動しているってどういう事ですか?」
神宮寺博士は
「私にも分かりません……何か運び屋の様なものか。
北海道の海底からこのままだと東京に向かって……」
波川司令は
「分かりました!すぐに緊急警告を発令します!移動したと思われるルートにも
避難警告を!」
と言うとあわただしくアメリカのCDC(疾病管理センター)に緊急連絡を始めた。
東京ではゴジラとケーニッヒギドラの戦いが続いていた。
その中にモスラが強引に割り込んで来た。
ところでモスラの敵はあくまでも地球防衛軍などで、人間一般では無かった。
またゴジラもケーニッヒとは直接関係はなかったが、
彼らの戦いがインファント島への攻撃と一般人の被害につながる事を知っていた。

モスラ火の鳥の様に炎を身体に纏いそのまま体当たりして攻撃しようとしたが、
見えないバリアの様なもので跳ね飛ばされた。ゴジラもケーニッヒに体当たり
するが、見えない力で動きを止められた。
ケーニッヒはゴジラにひざ蹴りを食らわせた。
モスラは再び炎を身に纏い攻撃して来た。
ケーニッヒの右首が東京タワーを見た。

ケーニッヒはためらわずそれを掴むと土台ごと引ちぎり、
体当たりを仕掛けたモスラにバットの様に叩きつけた。
大爆発が起き、東京タワーは真っ二つとなった。
続いて体当たりしてきたゴジラの頭を殴りつけ、ビルに叩きつけた。
さらに東京タワーを槍の様に、ゴジラの脇腹を勢いよく突き刺した。
ゴジラは悲鳴を上げもがいたが、ケーニッヒギドラは突き刺さった東京タワーを蹴った。
その勢いで東京タワーはますます深々と突き刺さり、
ゴジラの身体はビルの壁に張り付けとなった。
東京の廃墟でゴジラとケーニッヒの激しい戦いをただ
呆然と眺める美雪の意識と小美人がいた。
美雪は大きな精神的ショックを受け、必死に覇王圭介の正体が
ケーニッヒギドラだという事を頑なに否定し続けた。
美雪は彼の笑顔を思い出しながら
「そんなの信じたくない!嘘よ!嘘に決まってるわ!……」
と否定した。冷静に小美人は
「彼は地球に来る前に人間に変身しました。しかし人間の時とギドラの時の心の
在り方があまりにも食い違っていた為にギドラとしての自我が消失して記憶喪失になり、
代わりに人間である覇王圭介としての新たな自我が生まれたのです!
まだ彼の自我は2つに分かれていますが、
人間達と付き合っている間に内なる何かが変わって、
今2つの自我が一つになろうとしています!」
美雪が
「その内なる何かって?」
と聞いた。小美人は
「人間なら誰でも持っている自分の心の内の深く暗い闇と、
それに打ち勝つ強い心の力です!」
と言った。

その間、美雪の眼前では、
モスラがケーニッヒギドラに向かって、炎を纏い再び突撃していた。
ケーニッヒは黄金の光線を4発放った。
モスラは左右上下にかわしながら周りに毒鱗粉を撒いた。
5発目の黄金の光線がついにモスラを捉え、大爆発を起こした。
ケーニッヒは勝ち誇ったように振り向いて吠えた。
しかし3つ首が背後の気配を察知した様に睨みつけると、
ケーニッヒは反射的に伏せて、4つ足になった。
その直後、大爆発と共に炎を纏い火の鳥になった
モスラがケーニッヒの背中数センチをかすめた。

モスラは勢いよくUターンして再び突っ込んで来たが
ケーニッヒは「ニヤッ」と笑い消失した。
救助艇ではCCIの職員の一人が、
「ケーニッヒギドラ消失しました!」
と報告した。ニックが救助艇の隅っこで
「またか?一体どういう事だよ!」
と大声を出した直後、ジェレルが
「一体?……」
とつぶやいた。さらにCCIの職員が
モスラが!信じられません!消失しました!」
やがて2分後、大爆発が花火の様に次々と起こり始めた。
もう一人のCCIの職員が
「2体は光速なみの速さで移動しています!」
と言った。

(第39章に続く)