(第46章)脱出と不安

(第46章)脱出と不安

中国の遺跡の地下の分厚いガラスはとうとう壊れ、ドッと地底湖の水が流れ込み、
先ほど凛や友紀や遺跡の調査チームが脱出した穴に向かって鉄砲水のごとく流れた。
外へ脱出した凛と友紀を始め遺跡チームは大きな揺れを感じたのであわてて森の奥に避難した。
やがてその穴の周りが裂けて水が吹き出し、大きな河になって池に流れ込んだ。
ゴジラとジュニアも地上の河に脱出した。
森の奥に避難していた友紀に、ゴジラとジュニアの背びれが
チラッと見えた。やがて2体は大きな池から地上へ脱出した嬉しさからか大きな咆哮を上げた。
しかしゴジラは暁色の塊を見つけるとそれがすぐにバガンだと分かり、途端に怒りの咆哮を上げた。
尾崎とゴードン大佐が狼の形をした遺跡の方を見ると、遺跡は
まるで砂漠の砂の様に崩れて消失していった。
凛や友紀を始め調査チームは、ようやく近くの森に停泊している救助艇に無事辿り着いた。
救助艇の外では密輸船の3人やニックとグレン、アヤノ、
ジェレルがしばらく砂漠の砂の様に崩れ去った遺跡の様子を
眺めていたが、ふとアヤノが森の方を見ると、顔中泥まみれズブ濡れの遺跡調査チームが見えた。
ジェレルは大喜びで
「おーい!ここだ!」
と激しく両手を振った。
密輸船の3人も
「おーいここだ!大丈夫か?」
とその調査チームの方に走り出した。
凛は
「怪我人がいるわ!早く緊急治療を!後頭部を打って意識不明なの!」
と言った。隣にいた女性FBI捜査官は驚いた様に凛の顔を見た。
凛は母親の美雪と久しぶりに再会した。二人は互いに涙を流して抱きしめ合った。
男性FBI捜査官は奇跡的に軽い脳しんとうだけで済んで、命に別条は無いと医師は説明した。

調査チームと共に一緒に脱出したビリーやジュン、楊国花はその後、
地球防衛軍のミュータント兵や米軍達に拘束された。
拘束された全員は、生まれて初めて『命は尊いものだ』と言う事を、
嫌と言う程思い知らされた。
それから凛と友紀はシャワーに入り、身体を綺麗にした。
温かいココアが、拘束された人達も含み、全員に支給された。
友紀はすっかりココアで体が温まり
「あの遺跡の中で凛ちゃんが暁色の化け物に飲み込まれた時、
何で……蒸発したのかな?あの黄金の光は何だったんだろう?」
と言った。凛は友紀の隣に座りながら黙っていた。
友紀は空のコップを机に置くと、凛に向かって
「ねえ?あなたは何なの?」
と質問した。
それでも黙っている凛にとうとう怒った様に
「ねえ!教えてよ!あの化け物とあなたの間に何があったの?!どうして!!ねえってば!」
と肩をゆすった。
凛は長い間黙り続けていたが
「大丈夫!あたしとは関係無いわ!」
友紀は疑いの目で
「本当に?何も無いの?」
凛が黙ってうなずくと友紀はようやく安心した様に
「そう…良かった…御免…酷く肩をゆすったりして」
凛は笑いながら
「ううん…気にしないで!」
と返した。

水しぶきをあげて現れたバガンを見つけると、
先にゴジラが怒りの咆哮を上げながら体当たりした。
しかしバガンは倒れなかった。
それどころか逆にゴジラを押し返し、両肩から生えた長い触手を
ゴジラの両手に巻きつけて持ち上げると後ろに投げ飛ばした。
そこへジュニアが駆けつけて来た。

救助艇内にある特別室では
「友紀の父親は中国の上海の避難所で無事保護された」
と尾崎達から聞いてすっかり安心し、疲れ果ててベッドで爆睡している友紀に対し、
凛はゴジラとジュニアが心配で眠る事が出来なかった。
凛は小さな鏡が幽かに発光しているのが気になったが、
ただ光っているだけでゴジラとジュニアがどうなったのかは皆目見当がつかなかった。
またバガンがどうなったかも気になった。
それで不安を紛らわそうと訳の分からない中国拳法の様な動き
を始めた。凛は何故こんな動きをしたのか全く分からないが、
とにかく「不安で仕方がないのでそれを紛らわしたい」ただそれだけだった。

バガンは口から火球を吐いてジュニアの身体を吹き飛ばした。
ジュニアは宙を舞って、水しぶきを上げて落下した。
投げ飛ばされたゴジラは立ち上がり、後ろから右回転して尾を叩きつけた。
しかしバガンはその場を動かず、続いてゴジラは放射熱線を吐
こうとしたが、バガンは長い暁色の尾を伸ばしてゴジラの首を
強く締め付け、放射熱線を封じた。ゴジラは呼吸ができず、もがき苦しんだ。
そこへジュニアが放射熱線でバガンの尾を粉々に破壊した。
尾の破片は蒸発して消えた。
救助艇の部屋で凛は壁に体当たりし、さらに左回転しながら
回し蹴りをしたが間違えてつま先を壁にぶつけ痛い思いをした。
ふと何かを思いついた様に今度は人差し指を握り込み付き出した
拳を頬に付けるとそのまま「ヒユッ!」とパンチした。
バガンは長い爪で何度もゴジラの腹を切りつけ、吹き飛ばした。
そしてバガンゴジラの血が付いた爪をペロッとなめた。
そこへ米軍のFA18戦闘機が現れ、FA18戦闘機は12発のミサイルをゴジラ達に向かって放った。ゴジラは放射熱線で正確に全て撃ち落とした。
バガンも次々とミサイルを触手で
叩き落としていった。
ふと起きた友紀は凛を見て
「何変な動きをしているの??」
と寝ぼけ眼で聞いた。凛は
「別に……ただの暇つぶしよ!」と答えながら何度もその動作を続けた。
友紀は左右に首を振りながらまた布団に潜って再び眠り始めた。
ゴジラ、ジュニアとバガンが戦っている巨大な池から数km離れた森の上空を、
アメリ地球防衛軍のランブリングと米軍の部隊が救助艇と合流する為に飛行していた。

(第47章に続く)